住宅ローン返済中であっても売却せず、住み続けることが可能か
住宅ローンは、自分もしくはその家族が住むための住宅を購入することを目的に、金融機関から借り入れをする商品ですので、離婚によって債務者本人が居住しないということであれば、本来の目的に反することになってしまいます。
そのような状況になった際は金融機関と相談することも必要ですが、その前に、住宅ローンの組み方を確認しておきましょう。
なお、住み続ける事を望んでいたとしても、離婚後、夫婦間で完全に音信普通になるような状態であれば、住宅ローンを支払いながら、住み続けるということはそもそも無理ではないかと思われます。
1.単独の時(夫もしくは妻が単独で住宅ローンを組んでいる)
■返済しながら、自ら居住する | ■債務者が返済しながら、他方が居住する |
債務者が返済し、債務者が居住するので特段問題はありません。 | 債務者が承諾すれば、他方は居住出来ます。 |
<他方にとってのデメリット> ・債務者の単独名義のため、他方に相談なく売却することが出来ます。 ・債務者の返済が滞ると競売になり、立退きの可能性が出て来ます。 |
2.連帯債務型の時(夫もしくは妻が債務者、他方が連帯債務者となっている)
住宅ローン控除を夫も妻も受けているのであれば、この型になります。持分もそれぞれお持ちと思います。
■債務者が返済しながら、自ら居住する | ■債務者が返済しながら、他方が居住する |
債務者が返済し、主債務者が居住するので特段問題はありません。 | 債務者が承諾すれば、他方は居住出来ます。 |
<他方にとってのデメリット> ・離婚が成立しても他方は連帯債務がついたままとなります。 ※他方は連帯債務者ですからローン返済義務は当初からあります。 |
3.連帯保証型の時(夫もしくは妻が債務者、他方が連帯保証人となっている)
■主債務者が返済しながら、自ら居住する | ■主債務者が返済しながら、他方が居住する |
主債務者が返済し、主債務者が居住するので特段問題はありません。 | 主債務者が承諾すれば、他方は居住出来ます。 |
<他方にとってのデメリット> ・離婚が成立しても他方は連帯保証人のままとなります。 ※他方は連帯保証人ですから債務者がローン返済に滞ると支払をする義務は当初からあります。 |
4.ペアローンの時(夫が債務者で妻が連帯保証人、妻が債務者で夫が連帯保証人となっている)
※ペアローンは1つの物件に対し、ローンは2本立てです。夫も妻もそれぞれ債務者であり、他方の連帯保証人でもあります。※出資した額の割合に応じて共有持分を持ちます。
■どちらかが居住する |
<デメリット> ・お互いに債務者であると同時に連帯保証人であるため、居住する方も、他方の支払い状況を気にする必要があり、居住しない方は、離婚した他方のために住宅ローンを払い続けることになります。 |
財産分与をどうするかという問題はありますが、前述の1.2.3は債務者が承諾し、返済が継続すれば、他方は住み続ける事が可能となります。
前述の4、ペアローンはローンの特徴から住み続ける事は難しいと言えます。
2人それぞれ収入があるため、より金額の高い住まいを購入することを目的にペアローンにしたはずです。
離婚のような関係性であると、自身が居住せず、ローンも返済しながら、他方を住み続けさせることはしないでしょうし、他方の借入額を自分で引き受け、借入額を1本化することも現実的には難しいでしょうから、住み続けることは出来ないと思われます。
なお、1~3において、住み続けることが可能になったとしても、次のようなことを考えておく必要があります。
考えること1)
債務者の返済が滞ると競売になり立退きになる可能性があります。
コロナのような状況で仕事が上手くいかないとか、健康を害して思うように働けなくなるなどの事です。
他方が居住していれば、督促状などの郵便物で気づかれるかもしれません。競売になる前には、事前に競売開始決定通知や現地調査の通知が来て、裁判所から執行官が現地調査に来ます。執行官は占有者の有無や室内の様子を確認にくるため、鍵を開けてでも入ってきます。執行官が来ると、3~6ヵ月で競売となります。
考えること2)
将来的にどちらかが再婚するなどして、再婚相手とこの家に住む(債務者)や再婚相手の家に住むから引っ越す(他方)という事もあり、離婚前の状況とは変わる可能性がある事は頭に入れておく必要があります。